競争戦略・人材マネジメント研究会 第4回
2019年1月17日(木)18:30~20:30
一橋講堂2階会議室201-203
山梨素明氏(元・ブラザー工業株式会社・L&M事業 事業企画部グループマネージャー)
「製品開発という仕事において人事評価の透明性・納得性がなぜ重要か?ブラザー工業株式会社の経験から」
製品開発における人事評価の透明性と納得性に関して、人事制度改革の前後で実施された従業員生活実態調査の結果を踏まえてお話をいただきました。概要は以下の通り。調査結果によれば、賃金、昇進・昇格を含めた人事評価に関する判断基準が明確かつ、従業員が納得できるものではない場合、人事評価に対する満足度が低くなることがわかりました。また、この人事評価満足度の低下が開発インセンティブを削ぐことのことです。開発現場での評価軸設定の難しさについて、現場の生の声を踏まえたご説明もありました。さらに、ご自身の中国子会社赴任の経験に基づき、中国人の人事に関する考え方に関してもお話をいただきました。中国人はラオパン型マネジメント(ラオパンと呼ばれるTopとの相性を重要視する中国ならではのマネジメント形式)による効率的なチームビルドと面子を大切にする特徴があるとのことで、これを踏まえた180度評価の実体験についてのご説明もありました。ご報告をめぐり、人事評価情報の開示や中国での開発チームマネジメントなどについて、活発な質疑と議論が行われました。
都留 康氏(一橋大学経済研究所・特任教授)
「日本企業再生の条件:製品開発からみた日本・中国・韓国の比較」
製品アーキテクチャと人材マネジメントとの関連の観点から、日本・中国・韓国企業を比較分析した研究結果に関してお話をいただきました。概要は以下の通り。日本企業は製品構想・企画に問題があるとの指摘があります。製品開発は上流工程と下流工程に二分でき、上流工程におけるエンジニアの協働が製品開発パフォーマンスに影響することが明らかになりました。また、上流工程における日本・中国・韓国の比較から、日本では製品開発エンジニアが開発全体のプロセスを主導しており、上流工程の職務経験者においてマーケティングや営業経験者の割合が最も低いことがわかりました。このことが、上流工程に市場ニーズが入りにくい構造を生み出し、その結果、製品開発のパフォーマンス低迷につながっているとのことです。ご報告をめぐり、今後の日本企業の製品開発のあり方などについて、活発な質疑と議論が行われました。