競争戦略・人材マネジメント研究会 第5回

2019年4月17日(水)18:30~20:30
一橋講堂1階特別会議室101-103

兼元 謙任氏((株)オウケイウェイヴ代表取締役会長)
「"ビジネスにおける利他"を考える/資本主義と助け合いの融合を目指して」(〜ホームレス経験と"感謝""助け合い"理念の起業/ビジネスについて〜」

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OKWAVEの設立に至った経緯や今後の展望に関して、幼少期や大学時代の経験を含むお話をいただきました。概要は以下の通り。身障者が使用する道具のデザインに携わった中で、なぜ他人にとって良いことをすること(利他性)とお金を儲けることが両立しないのかということに疑問を抱かれました。そこで、利他性とお金を儲けることを両立させる仕組みづくりとしてOKWAVEの設立に至りました。OKWAVEが構築した世界初のFAQシステムを様々な企業に導入することで、企業のサポート部門の負担軽減に貢献した事例等に関してお話をいただきました。更に、「感謝経済」という「イイコトをしたひとが社会全体からイイコトを受けられるプラットフォーム」を浸透させるべく、利他的な行動が良い評価として視覚化される手段として「感謝指数」に関しても貴重なお話をいただきました。ご報告をめぐり、兼元氏のホームレス経験や利他的な行動の認識と質などについても、活発な議論と質疑が行われました。


後藤 潤氏(神戸大学大学院経済学研究科講師)
「人間の利他性の起源は何か?インドにおける歴史データを用いた実証分析の紹介」

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利他性の起源に関して、南インド地区の漁業権を巡る集団間紛争と現代世代に対する実験データの分析結果を基にお話をいただきました。概要は以下の通り。利他性に関するダーウィンの推論が正しいのかという問題意識を起点として、偏狭的な利他性(内集団を贔屓し、外集団に対して敵対心を持つこと)に着目し、人間の道徳的な気質が社会に浸透した要因はなにか、また道徳的な気質は世代間継承が発生しているのかという研究に関してご報告いただきました。これらの要因や事象を推定するに当たり、南インド地区の漁業権を巡る集団間係争の裁判記録データと、係争した集団に属している現代世代に対する実験データを用いたそうです。推定結果によれば、集団関の争いが偏狭的な利他性を社会に浸透させた要因であること、また偏狭的な利他性は、親から子への教育を通じて、世代間継承されていることが明らかになりました。ご報告をめぐり、利他性の定義や区分などについても、活発な議論と質疑が行われました。

競争戦略・人材マネジメント研究会 第4回

2019年1月17日(木)18:30~20:30
一橋講堂2階会議室201-203

山梨素明氏(元・ブラザー工業株式会社・L&M事業 事業企画部グループマネージャー)
「製品開発という仕事において人事評価の透明性・納得性がなぜ重要か?ブラザー工業株式会社の経験から」

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製品開発における人事評価の透明性と納得性に関して、人事制度改革の前後で実施された従業員生活実態調査の結果を踏まえてお話をいただきました。概要は以下の通り。調査結果によれば、賃金、昇進・昇格を含めた人事評価に関する判断基準が明確かつ、従業員が納得できるものではない場合、人事評価に対する満足度が低くなることがわかりました。また、この人事評価満足度の低下が開発インセンティブを削ぐことのことです。開発現場での評価軸設定の難しさについて、現場の生の声を踏まえたご説明もありました。さらに、ご自身の中国子会社赴任の経験に基づき、中国人の人事に関する考え方に関してもお話をいただきました。中国人はラオパン型マネジメント(ラオパンと呼ばれるTopとの相性を重要視する中国ならではのマネジメント形式)による効率的なチームビルドと面子を大切にする特徴があるとのことで、これを踏まえた180度評価の実体験についてのご説明もありました。ご報告をめぐり、人事評価情報の開示や中国での開発チームマネジメントなどについて、活発な質疑と議論が行われました。


都留 康氏(一橋大学経済研究所・特任教授)
「日本企業再生の条件:製品開発からみた日本・中国・韓国の比較」

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製品アーキテクチャと人材マネジメントとの関連の観点から、日本・中国・韓国企業を比較分析した研究結果に関してお話をいただきました。概要は以下の通り。日本企業は製品構想・企画に問題があるとの指摘があります。製品開発は上流工程と下流工程に二分でき、上流工程におけるエンジニアの協働が製品開発パフォーマンスに影響することが明らかになりました。また、上流工程における日本・中国・韓国の比較から、日本では製品開発エンジニアが開発全体のプロセスを主導しており、上流工程の職務経験者においてマーケティングや営業経験者の割合が最も低いことがわかりました。このことが、上流工程に市場ニーズが入りにくい構造を生み出し、その結果、製品開発のパフォーマンス低迷につながっているとのことです。ご報告をめぐり、今後の日本企業の製品開発のあり方などについて、活発な質疑と議論が行われました。

競争戦略・人材マネジメント研究会 第3回

2018年11月26日(月)18:30~20:30
一橋講堂2階会議室201-203

田中 覚氏(ブラフマン・アンド・エス株式会社・代表取締役)
「営業人材・組織のマネジメント:ブラフマン・アンド・エス株式会社の取り組みから」

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営業人材マネジメントに関して、セールスコンサルティングの観点からお話しいただきました。 概要は以下の通り。 セールスコンサルティングにおいては、目標設定の段階からコンサルティングを実施している。 この目標設定の段階においては、各営業人材の「個」を意識しながら、営業人材が保有している現在のスキルレベルを把握し、スキルの向上を支援している。 これらの目標設定とスキル向上プロセスを通じて、各営業人材が自身の強みを認識し、さらに自身の強みにより磨きをかけられるように支援している。 さらに、営業人材の採用に関しても、ご自身の経験を踏まえた着眼点や採用後の人材育成などについて、興味深いお話を伺いました。 ご報告をめぐり、活発な質疑と議論が行われました。


上原 克仁氏(静岡県立大学経営情報学部・准教授)
「大手自動車ディーラーにおける営業人材のマネジメント」

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営業人材マネジメントに関して、大手自動車販売会社の人事データを用いた計量的事例研究の観点からお話をいただきました。 これまでの実証研究ではあまり扱われていない、上司(中間管理職)の機能および属性(年齢や経験店舗数など)が部下の業績に与える影響に関する興味深い分析結果が示されました。 たとえば、若い店長、店長昇進前に複数の職種を経験した店長の方が部下の業績を向上させる、 店長経験を通じた学習効果よりも優秀な店長を早期に選抜することの方が店舗業績への貢献が大きいなどというものです。 こうした結果を踏まえ、学術面から営業人材マネジメントのあり方に関する経営的含意を明確にされました。 ご報告をめぐり、活発な質疑と議論が行われました。

競争戦略・人材マネジメント研究会 第2回(2018/10/19)

2018年10月19日(金)18:30~20:30
一橋講堂特別会議室101-102

若月 上氏(欧州企業の日本法人の前・代表取締役)
「日本本社における海外子会社の人材マネージメントー実体験から学んだPMI 」

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「日本本社における海外子会社の人材マネージメントー実体験から学んだPMI 」と題してお話しいただきました。 概要は以下の通り。 日本企業のグローバル化の進展に伴い、In-Out M&Aが急増した。その結果として、海外子会社および取引先の数が急増し、日本本社にとって、継続的な事業経営のためにこれら海外子会社、取引先を適切に管理することが喫緊の経営課題となった。しかし、国内事業管理とは大きく異なり、言葉はもとよりRegulation, Tax management, 文化、商慣習等の多くの違いとリスクにさらされた環境の下、多くの企業が苦悩しているのが実態といえる。 いくつかの要因のうち、RHQ(地域統括会社)、現地オフィス等のマネージメント人材の不足が特に深刻である。 また、In-Out M&Aの約7割が結果的に失敗との統計があるが、買収後のデューデリジェンスとも言われるPMIの成否が主な要因とされている。PMIの成否は、まさにその企業のガバナンス力が問われる。 さらには、買収交渉時点でPMIまでを想定することが実際に可能かという点について、実際に買収された経験から、PEファンドによるM&Aに関しては、彼らはそれを実践しているのではないかと思われる。 ご報告をめぐり、活発な質疑と議論が行われました。


齋藤 卓爾氏(慶応義塾大学大学院経営管理研究科・准教授)
「PMIがM&Aの成否を分けるのか?」

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「PMIがM&Aの成否を分けるのか?」と題して、買収後の経営に関してお話しいただきました。概要は以下の通り。最近の日本企業によるM&Aのトレンド、国内の同業同士の合併からクロスボーダーM&Aへの変化などの特徴についてまとめた上で、日本企業によるM&Aの失敗原因として頻繁に上げられる買収後経営のあるべき姿と現実の難しさが論じられました。特に買収後経営の失敗にみえるケースでも、そもそもの戦略に問題があるケースが多いことが指摘されました。さらに、海外の企業による先進的な買収後経営についてなども興味深いお話を伺いました。ご報告をめぐり、活発な質疑と議論が行われました。

競争戦略・人材マネジメント研究会 第1回(2018/9/18)

2018年9月18日(火)18:30~20:30
一橋講堂会議室

八田 信氏(株式会社富士通システムズアプリケーション&サポート・常任顧問)
「ミドルアップダウン型経営モデルによるクラウドビジネスへの事業構造改革」

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ビジネス戦略の変化と人材マネジメントとの関係についてお話しをうかがいました。概要は以下の通り。 本事例では、効率重視の事業スタイルから、柔軟性の必要な中堅クラウド領域への事業領域拡大にあたって、トップダウンからミドルアップダウンに経営モデルの変革を行おうとした。しかし、設立当初の2年間はミドルアップダウンへの転換が十分行えなかった。そこで、経営モデル転換が十分行えなかった時期と、行えた時期を比較することによって、経営モデル変革の要点と効果について述べた。経営モデル変革を行えた時期は行なえなかった時期に比べ、組織内のリーダシップ水準は2倍に拡大し、生産性も1.08倍向上し、クラウドビジネスの構成比率も23%から39%に拡大したことが報告された。 以上の報告をめぐり、活発な質疑応答がありました。


中島 賢太郎氏(一橋大学イノベーション研究センター・准教授)
「職場内コミュニケーションは生産性を引き上げるか?ウェアラブルセンサを用いた実証分析」

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現代の知的職場における従業員間コミュニケーションは、特に、日々直面した問題を解決する上での各自の持つ専門知識、情報の交換を通じて、職場の生産性向上に対して重要な役割を果たしていると考えられます。本報告では、実際の従業員間の対面コミュニケーションをウェアラブルセンサーによって把握し、各従業員のコミュニケーションのあり方が、彼/彼女らの業務成果に与える影響について定量的な評価を行った研究の概要をご紹介いただきました。対面コミュニケーションを通じて効率的に情報収集を行っていることを示す指標と考えられる、媒介中心性と呼ばれるネットワーク指標が、各従業員の業務成果、特に、問題を職場内で解決できるか否かという、従業員間の知識交換・情報共有が必要な業務成果において重要な役割を果たしていることなどが見出されました。ご報告をめぐり、活発な質疑と議論が行われました。